[3826] 【新春コラム】初夢っつーか。 投稿者: 投稿日:2004-01-01 (Thu)
■2003年上期、日本のPDA出荷台数は21.3%減〜ソニーとLinuxが健闘(PC Watch)
ぶっちゃけ、個人市場で37.9%、日本市場全体で28.0%を握っているSONY社はとっても頑張っていると思うのだが、すんごく正直な気持ちを言わせて貰うと、狭い市場でどんなにシェアを獲得してもあんまり意味がないと思う。市場全体が広がってくれないと本当に嬉しくも何ともない。
さて、今日は年明け早々ということで、ちょっと丁寧にそのあたりのことを書く。
これまでも何度も書いてきたように、今、PDAは売れていない。そんなこと、私が書くまでもない。冒頭の記事でも“前年比21.3%減”という凄まじい数字が出ている。では、PDAはダメになったのか?視点の問題にもよるが、PDAに突然何かの欠陥が起こって売れなくなった訳ではない。とくに、PocketPC系のマシンは値段的にも機能的にも安価でシンプルな道を歩み始めたことで、数年前よりも格段に素晴らしいマシンを提供している。また、PalmOSマシンやLinux系のマシンだって、決して過去のマシンよりも確実に悪化した点などないように思う。では、なぜPDAの売れ行きは落ち込み続けているのか?
簡単に言えば、消費者にそれを買う理由がなくなったからだ。少し前のPDAブームの時代なら、「PDA」というだけで購入する理由があった。流行のアイテムを手にすることで、何らかの優越感が得られたからだ。ところが今、その魔力は失われてしまった。PDAという言葉に魔力があった頃、それは「システム手帳の代用品」だったり、「超小型のノートパソコン」だったりした訳だが、そこに携帯電話の高機能化という事情が加わって、話はさらに混乱した。簡単に言うと、PDAはノートパソコンよりは小型だが機能は中途半端で、携帯電話より機能は充実しているが大きすぎるしネットワークに限界のあるマシンになった。もちろん今でも「システム手帳の代用品」という意味はとても大きなテーマなのだが、それだけで売れる市場には限界があるらしいことがわかってきている。
という訳で、たった今のPDAの現状についてまとめる。消費者にはPDAを購入するための積極的な理由が見あたらない。それを購入するモチベーションどころか、その売り場にまで足を運ぶモチベーションさえ希薄だ。売れる訳がない。
そこで提案だ。これまでにもパルマガで何度も提案してきたことだが、今、PDAを販売するためには「消費者のモチベーション」が必須だ。それについて考える時、パソコンやらPDAやらが売れ行きを落としている中で「電子辞書」が意外と売れているという現実がある!中にはPDAマシンとほぼ同等の価格で、それよりも明らかに低機能でありながら売れているものがある。これは大きなヒントになる。また、PIM機能なんてPDAとは比べ者にならないぐらいにちゃちな機能しか持っていないものの、ご存じ!「携帯電話」は(以前ほどの馬鹿売れではないにしても)やっぱり売れている。同様の例で言えば「携帯ゲーム端末」も機種によってはかなりの市場を築いているし、MP3音源に特化したアップル社のiPodのような「音楽プレイヤー」もかなり市場を築きつつある。
ここで紹介した「電子辞書」「携帯電話」「携帯ゲーム端末」「音楽プレイヤー」の共通点とは何か?そう、PDAから1要素を取り出しただけの単機能マシンだったり、PDAに比べると多機能性で見劣りする複合端末であるにもかかわらず、それらはPDAよりも売れていたり、独自の巨大な市場を確保している。なぜか?…少なくともPDAよりは「消費者のモチベーション」がしっかりしている。売り場まで出かけていく理由がある。そのため、場合によってはPDAよりも機能が少ないわりに値段が高い場合でも、それは売れていたりする。そう、PDAは一時期のブーム的なモチベーションが去った今、新しいモチベーションを作らないと売れない。少なくとも売り場に来ない。
そこで、考えられる簡単な解決法は、本来は個性のひとつだったりするPDAの特徴のひとつ、多機能性にあえて目をつむった販売戦略だ。例えば、低価格機種や一世代前の機種に「電子辞書をプリインストールしたメモステ」を同梱した電子辞書パッケージを作って「辞書クリエ」というブランドで、電子辞書コーナーに置く。もちろん戦略的な価格は必須だ。(当然、必要なソフトは本体にプリインストール済み!)さらに、現行ではまだ市場を開拓し切れていないがその可能性がある電子書籍分野に向けて「読書クリエ」というブランドで、第一歩的な人気書籍をメモステに満載したパッケージにも可能性があると思われる。こちらは、電子辞書よりも市場が熟成していないので、他社の電子ブックリーダーを食って新しい市場を開拓してしまう可能性もあると思う。
続いて、こちらは「辞書クリエ」や「読書クリエ」ほどのインパクトはないが、「地図クリエ」(同梱メモステに全国地図が入っている!)や「遊技クリエ」(同梱メモステの中に人気ゲームが多数!)、「グルメクリエ」(同梱メモステの中に首都圏の地図データとグルメデータが入っている!)、「TVクリエ」(自宅で撮影したテレビ番組を見るための端末)なども考えられる。(※すでに需要がある「辞書クリエ」や、これからの需要が見込めそうな「読書クリエ」に比べると、「地図クリエ」「遊戯クリエ」「TVクリエ」などはやや魅力薄であることは認める。正直、「辞書クリエ」と「読書クリエ」だけでもいいのだ!)
これらの新ブランドは、デザイン的な統一感を持ちながらもパッケージやブランドロゴの色違いで識別することが出来、これらがそれぞれの売り場(必ず、正しい売り場に置かれている必要がある!)に置かれていることが必須である。なぜなら、こうして統一感のある別目的のマシンが様々な場所に置いてあることで、消費者はこのマシンの本当の特徴(多機能性!)もまた知ることが出来るからだ。さらに値段!極端なことを言うと、このシリーズで金を稼ぐなと言いたい。変な話だけど。ライバル機種(PocketPCじゃなく、電子辞書とか、読書リーダー!)には絶対に負けない価格設定が必須。とにかく、本当は多機能なのに単機能機よりも手軽に使えて便利!という印象づけが必須なのだ。こうして単機能を目的に購入したユーザが、PDAという多機能性に注目してくれれば、PDAというカテゴリはその名前こそ失うかもしれないが、新しい余命を見つけそうな気がする。
ところで、大切なことについてひとつだけ触れていない。そう、「(携帯)電話クリエ」というブランドだ。本当はこれが誕生する時代こそが待ち望まれている。今は便宜上スマートフォンとか呼ばれたりしているが、要するに「携帯電話」というカテゴリに集約されることになるだろう音声通信機能を持った携帯端末の話だ!最終的にはここでPalmOSが、つまりクリエが自己主張できなければ生き残る道は限りなく狭くなる。だが、その実現はもしも順調にいったとしてもまだまだ先のことだと思う。そこで繰り広げられる最終戦争の結末がどうなるかはともかく、それまでの繋ぎとして、PDAというカテゴリが、クリエというブランドが日本でこれ以上先細りしないためのアプローチがあってもいいかなと思うのだがどうだろう?
極端な話、パソコン分野やAV分野でも実感しているはずだと思うが、技術畑がどんなに頑張っても越えることの出来ない市場的なハードルというものがある。今のPDAが陥っているジレンマはまさにその種のものだと思う。技術畑だけでなく、営業畑なども一緒になって解決しようとしなければ越えることの出来ないハードルだってあると思う。
※ところで、最後まで肝心の「音楽クリエ」の話が出てこなかったけど、どうなってるのか?そのあたりは、さすがにSONYという会社事情に気遣ってみた。
※あはは、いちおう書いておくけど、PDAがかくあるべきだとか、PDAがコレじゃダメとか、そういう原則論とは、ま〜〜〜〜ったく関係のない話なので、よろぴく!